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地域の「健康」と「可能性」を明日へつなげる挑戦 スイミングアローズむつ

健康事業学習事業教育事業

「水泳を学べる場を、むつに残したい」その想いから始まった挑戦

むつ市から水泳を学べる場所がなくなる──。

その現実を前に、「このままではいけない」と私たちは立ち上がりました。唯一の水泳教室として地域に根づいていた「スイミングアカデミー」が2021年、経営上の事情により継続困難となり、閉鎖の危機に直面したのです。

地域の子どもたちの未来から「泳ぐ」という選択肢が失われることを危惧し、私たちはこの教室の事業を引き継ぐ決断をしました。

 

地域の未来を守るため、あえて挑む選択

譲り受けた時点で、生徒数は約340名。

施設は老朽化し、運営に必要な指導者の確保も容易ではありませんでした。それでも私たちが事業継承を決めた理由は、水泳の場を失うことが、子どもたちの可能性を奪うことにつながると考えたからです。

下北半島という海に囲まれた地に暮らしながら、泳ぐ力を身につけることができない――。それは、人生における選択肢を一つ失うことに他なりません。一方で、水泳という技能があれば、将来の可能性は確実に広がります。それは心身の健康とともに、「生きる力」にもつながると、私たちは信じています。

 

「健康」と「可能性」をつなぐスイミングアローズむつ

こうした想いのもと、私たちは「スイミングアローズむつ」として新たなスタートを切りました。

掲げたコンセプトは、“健康”と“可能性”を未来へつなげること。心と身体の両面から生徒を支え、「やってみたい」「できるようになりたい」という気持ちを応援しています。

現在、教室には92歳の方が通っています。80代後半で一度退会されたものの、「ここに来るのが生きがい」と再び戻ってきてくださいました。日々の運動だけでなく、コーチや仲間との会話も楽しみの一つ。継続的な運動により「歩くのが楽になった」と笑顔で語ってくださいます。

また、子どもたちへの指導では「自主性の育成」を重視。なぜこの練習をするのか?なぜこの指導なのか?自分はどうしたいのか?―問いかけを通じて、子ども自身が考え、判断し、行動できる力を育てています。

中学生を対象とした地域クラブ「むつ☆かつ」では、競技水泳に特化した指導を展開。大会での上位入賞を目指し、より高いレベルで挑戦したい子どもたちをサポートしています。

スイミングアローズむつは、年齢や目標を問わず、すべての人が自分のペースで成長し、人生を豊かにする場でありたいと考えています。

私たちはこれからも、むつ市で「泳げる環境」を守り、広げていくことに尽力していきます。

 

スイミングアローズむつ 所長 若狭直哉